市民後見ニュースレター2021年8月号を発行しました
今回のニュースレターの特集は「ユマニチュード」です。
ユマニチュード?初めて聞く方も多いと思いますが、是非ご一読ください。
市民後見ニュースレター 2021年8月号
当協会理事が越谷市 市民後見人研修会に講師として登壇しました
日 時 : 2021年6月29日(火) 9:30 ~ 11:30
テーマ : 「市民後見人像」と越谷市における
市民後見人の「キャッチコピー」を考えよう!
越谷市社会福祉協議会(成年後見センターこしがや)で、越谷市市民後
見人候補者名簿登録者継続研修が開催され、当協会理事の加藤大貴が講師を務めました。
研修会は、テーマに沿って加藤が簡単に説明し、参加者によるグループワークを中心に行われました。
成年後見センターこしがやは、成年後見人等の受任件数が、埼玉県内第1位だそうです。
押さえておきたい基本の「き」 ~成年後見入門⑪
ある親族後見人候補者の業務日誌をご紹介し、
成年後見制度の実情について皆さんに知っていただきたいと思います。
今回は、ご本人と接する際、非常に参考となるケアの現場で生まれた
「ユマニチュード」というケアの技法について触れてみます。
ℚ:後見制度を利用するって、どこに相談しどのように進めていくのかしら?
後見人等にとって、ご本人と接する際、どのように接していいのか戸惑うことや
意識しないで取った行動が非常に失礼な行為になっていることがあります。
親族が後見人等に選任されると、親族と後見人等という第三者の立場で
行動しなければならない場面もあり、なかなか難しい問題となってきます。
そうした時にケアの現場で開発された
「ユマニチュード」という技法を少し学んでみませんか。
フランスの体育学の専門家イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが、
病院職員の腰痛予防プログラムの指導者としてフランス文部省から派遣され、
この分野で仕事を始めました。
現場では、専門職が何でもやってあげているということに気付きます。
立てる力があるのに寝たまま清拭をしたり、
歩く能力のある人にも車椅子で移動を勧めたりといったことです。
本人が持っている能力をできる限り使うことで、その人の健康を向上させたり、
維持することができる、その人のもつ能力を奪わないという考え方が基本になっています。
『ユマニチュード』
イヴ・ジネストとマレスコッティは、認知機能が低下し身体的にも脆弱な高齢者に対し、
ケアを行う時に、うまくいく、うまくいかないは、
見る・話す・触れる の方法に違いがあることに気付きます。
また、人は立つことによって生理学的な効果のみならず、その人らしさ、その尊厳が保たれることから、
この4つの要素、見る・話す・触れる・立つことを、ケアの4つの柱と名付け、
このケアを1つの物語のように一連の手順で完成させるケアの5つのステップで構成する
ケア・コミュニケーション技法を考え出しました。
【ケアの4つの柱】 ・・・大切に思っていることを相手に分るように伝える技術
・ 見る技術
見ることで相手を大切に思っていると伝えるには、仕事のために必要な視覚
情報を得るためだけの見るではなく、見ることで伝わるメッセージ、同じ目の
高さで見ることで平等な存在である、近くから見ることで親しい関係である、
正面から見ることで相手に対して正直であることが伝わります。
ベッドに横になっている人、座っている人に立って話しかける場合など、自身
では、そんなつもりではなくても、見下ろすことで私のほうがあなたより強い
という否定的なメッセージが届いてしまいます。
・ 話す技術
話すときも仕事のための話すだけではなく、相手のことを大切に思っている
と伝えるための技術を用います。
低めの声は安定した関係を、大きすぎない声は穏やかな状況を、前向きな
言葉を選ぶことで心地よい状態を実現することができます。
相手から返事がない時は、私たちは次第に黙ってしまいますが、無言の状
況では、あなたは存在していないと否定的メッセージとなります。
・ 触れる技術
ケアを行う時、着替え、歩行介助などで、必ず相手に触れますが、その時相
手をつかんでいることに私たちは無自覚です。
つかむ行為は相手の自由を奪っていることを意味し、認知症行動心理症状
のきっかけとなってしまうこともよくあります。
触れることも相手へのメッセージです。相手を大切に思っていることを伝える
ための技術を用います。
具体的には、広い面積で触れる、つかまない、ゆっくりと手を動かすことなど
によって優しさを伝えることができます。
触れる場所もコミュニケーションの重要な要素です。できるだけ鈍感な場所、
背中、肩、ふくらはぎなどから触れ始め、次第に敏感な場所、手、顔などに進
みます。
・ 立つ技術
人間は直立する動物です。
立つことによって体のさまざまな生理機能が十分に働くようにできています。
さらに立つことは、人間らしさの表出のひとつでもあります。
1日合計20分立つ時間を作れば、立つ能力は保たれ、寝たきりになることを
防げる、とジネストは提唱しています。
これはトイレや食堂への歩行、洗面やシャワーを立って行うなどケアを行う時、
できるだけ立つ時間を増やすことで実現できます。
【5つのステップ】
「ユマニチュード」では、すべてのケアを一連の物語のような手順である5つの
ステップで実施します。その手順は、次の5つで構成されます。
① 出会いの準備 : 自分の来訪を告げ、相手の領域に入って良いと許可を得る
② ケアの準備 : ケアの合意を得る
③ 知覚の連結 : いわゆるケア
④ 感情の固定 : ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返る
⑤ 再会の約束 : 次のケアを受け入れてもらうための準備
いずれのステップも、4つの柱を十分に組み合わせたマルチモーダル・コミュニケーション
(視覚 ・ 聴覚 を含め、複数のコミュニケーションモードを利用すること)を用います。
※(参考)ユマニチュードとは 日本ユマニチュード学会 https://jhuma.org/humanitude/
<後見人の業務>
〜ある親族後見人のある日の日誌より〜
今回、紹介するHさんについてご説明します。
H さん:28歳 男性 兄弟姉妹なし5年前に父親を亡くし、
地域の知的障害者の作業所に通所しながら母親と賃貸住宅で二人暮らし。
父方の祖父が3月前に亡くなる。祖母は、既に他界していたため、
祖父は田舎で一人暮らしをしていた。
祖母が亡くなってから、父親が存命中でも、田舎が遠方だったこともあり、疎遠。
祖父の遺言執行人の弁護士から連絡が入る。
祖父は預貯金だけではなく、土地・建物などの不動産も所有していたことから
3人の子供に遺言書を残していたとのこと。
亡くなった父親の代襲相続人となるHさんと伯父、叔母の3人が相続人とのこと。
母親は、弁護士から手続を進めるにあたり、本人に後見人を立てるよう勧められ、
法テラスや行政、地域の社会福祉協議会に相談するようアドバイスを受ける。
母親は、本人の将来を考え、後見制度を検討しようかと思ったこともあるが、
良くない話を聞いたり、制度自体がどうも理解しにくく、決心がつかないまま放置。
今回は、他の相続人に迷惑をかけることになるため放っておけず、
近くの社会福祉協議会で、後見制度の説明を受け、相談しながら決めることとし、
今後のこともあり、記録を残すようにした。
【ある親族後見人候補者のある日の日誌】
○○月○○日 ~ ○○月○○日
社会福祉協議会にアポントを取って訪問。後見制度のパンフレットをもとに簡単
に制度について説明を受けるが分りにくく、手渡された管轄エリアである東京家
庭裁判所の「申立ての手引」や申立書類一式を、自宅で何度となく読み返し、再
度社会福祉協議会に今回の件を相談する。相続関係は弁護士や司法書士の
専門職に任せた方がよいのでは!と勧められたが、自身もまだ52歳。
息子のことを他人に任せることにも違和感もあり、自身が後見人候補者となって
色々と教えてもらいながら申立てることとした。
後見人の候補者が必ず選任されるわけではないと説明を受けたのだが。
申立書類の作成は、何度となく聞きながら取り掛かり、その間、かかりつけ医に
診断書の作成を依頼したり、役所に行って戸籍抄本や住民票をもらいに行く。
また、あまり意味が分からないまま、東京法務局に行き、本人が後見・保佐・補
助・任意後見を受けていないことの証明書である「本人が登記されていないこと
の証明書」を入手し、申立に必要な収入印紙や郵便切手も準備をした。
作成した申立書や準備したものを、社会福祉協議会で最終の確認をしてもらい、
東京都では、愛の手帳(知的障害者の療育手帳)のコピーも必要と云われ準備
し、面談予約を取るために東京家庭裁判所に電話をかけた。
面談は、8日後の○○日10時となり、申立書類の中の「提出書類確認シート」に
予約日時等を記入し、申立書類に収入印紙、郵便切手を送るように云われる。
面談日の3日前までに到着しないと面談取り消しになるとのこと。早い目に投函
することとする。
面談当日、家庭裁判所に赴き、裁判官と面談。かなり緊張していたが、申立の
経緯などを話して1時間半くらいで何かと終了。
面談日から1か月後くらいに、後見人選任の審判書が到着。
社会福祉協議会にお礼を兼ね報告に行く。2週間後に審判が確定し、後見人と
して活動できるようになるみたいだが、司法書士の監督人も選任されていたこと
の不満を云うと、親族や市民後見人の場合、所有財産などが多い場合、監督人
が選任されることが多いとのこと。監督人が付いたことに不服申立てはできない
とも言われ、監督人から連絡が来るのを待ち、親族後見人がスタートする。