市民後見ニュースレター2021年6月号を発行しました

今回のテーマは「身元保証」についてです。

後見人は身元保証人になれるの?是非ご一読下さい。

 

市民後見ニュースレター 2021年6月号

(以下:文章内容)

押さえておきたい基本の「き」 ~成年後見入門⑨

ある後見人の業務日誌をご紹介し、成年後見制度の実情について
皆さんに知っていただきたいと思います。
その前に、今回のテーマである「身元保証」について触れておきます。

ℚ:ご本人の施設入所時に身元保証人を後見人に依頼されたらどうするの?

成年後見人等を受任すると、ご本人が入院したり、施設に入所(入居)したりすることがあります。
ご本人のために入院申込書などの手続や入所(入居)する施設を探したり、
入所(入居)契約を結ぶことは後見人等の職務となりますが、
その際に協力を得られる親族がいない場合、医療機関や施設から
後見人等に「身元保証・身元引受等」を求められることがあります。
でも、後見人等がご本人の債務の保証人等になることは、一般的に適切でないとされています。

 

【身 元 保 証 等 – ①】

ご本人が、施設に入所(入居)する際、契約を締結したりすることは、後見人等の職務ですが、
ご本人に親族がいない場合やいても協力が得られない場合、
施設から後見人等に「身元保証・身元引受」を引き受けてほしいと依頼されることがあります。

施設が求める「身元保証・身元引受」の主な目的は次のようなものです。
① 緊急時の連絡先になること
② 退所時にご本人やご本人の荷物を引き取ること
③ 亡くなった場合の遺体や遺品の引き取り
④ ご本人が支払えない利用料等を支払うこと

④について、ご本人が滞納している利用料等を本人の財産から支払うことは、
本人の財産管理として認められると考えられます。
一方、利用料等を後見人等が立て替え払いをすることは、一般的に適切でないとされています。
これはご本人の財産を管理する後見人等が立替金をご本人へ請求をすることとなった場合、
利害が対立する利益相反※の状態が生じるからです。
また、医療機関では、医療行為および入院計画書への同意や本人の所持品の預かり、
入院中の必要な物品の準備、退院時の支援なども求められることもあります。
しかし、医療行為に対する「医療同意」については、前号(2021年05月号)で説明したように
後見人等には医療の同意権がなく対応できません。

※利益相反
成年後見制度での利益相反にあたる行為というのは、
後見人等にとっては利益となり、ご本人とっては不利益となる行為をいいます。

【身 元 保 証 等 – ②】

では、実際に施設や医療機関から後見人等に「身元保証・身元引受」を求められたら、
現場ではどういう対応をしているのでしょうか。

施設や医療機関に対して、後見人等は、支払などについて、ご本人の財産管理をしているので、
ご本人所有財産から責任を持って支払うこと、緊急時の連絡先になることや
退所時にはご本人やご本人の荷物を引き取る手配をすること、
不測の事態が生じたときには、その窓口にもなること、
また、もしお亡くなりなった場合、遺体や遺品の引き取りの手配をすることなど、
後見人等が対応できる職務や立場を説明します。
そうすることで、身元保証人・身元引受人を不要としてくれるところもありますし、
どうしても必要とされる場合には、ご本人が利用料を支払えなくなった場合に
代わって支払うというような文言や身元保証人(身元引受人)を消すことを了承してもらい、
ご本人の法定代理人である後見人等として契約を締結します。

【身元引受人と身元保証証人の違い】

「身元引受人」には、法律上の定義があるわけではありませんが、
一般的には、責任をもって身柄を引き受ける人ということになり、
前ページで説明したような施設や医療機関が求める主な目的の①~③のようなことを行う人となります。

それに対して、「身元保証人」は、保証債務も負う場合もあるため、施設や医療機関が求める主な目的の中の
④「ご本人が支払えなくなった利用料等を支払うこと」なども加わり、
後見人等の財産から入院費や生活費を負担しなければならなくなります。
ただし、身元引受人や身元保証人の定義については、明確に法律で定められていないため
身元引受人と書いてあっても、ご本人に代わって利用料等を支払わなければならないこともあるので、
契約時には、よく確認することが必要です。

≪後見人の業務 〜ある後見人のある日の日誌より〜≫

今回、紹介するFさんについてご説明します。

Fさん : 82歳 男性 自宅マンションに一人暮らし。
子供さんは幼い頃に亡くし、5年前には奥さんも亡くなり、
親族は奥さん側の姪御さん2人で疎遠。
4年前から日々の生活支援は、介護保険を利用してヘルパーに依頼。
認知症状の進行に加え、体力的な低下もあり、ご本人は独居生活に不安を感じていて、
資産もあることから有料老人ホームの入居を希望している。
その入居契約および自宅マンションの売却なども視野に入れ、半年前に後見人が選任されている。
以前から有料老人ホームのパンフレットを集め、後見人が就任したこともあり、
数件見学にも出かけ、入居先を決めていたときに、風邪をこじらせ肺炎で入院。
入院中に面会した際、退院後の自宅での一人暮らしに対する不安を訴えたため、
病院のソーシャルワーカーとも相談し、退院後は直接有料老人ホームに入居するように取り計らうこととする。
以前住んでいた所に近い○○○施設に決めていたが、再度パンフレットを持参し、意思を確認し話を進めることになる。
施設に再度後見人が訪問し、入居申込を行い、退院日入居したく、入居日に契約を締結するこことなる。
住民票などの必要書類は送付済。

【ある後見人のある日の日誌】
○○月○○日 F さんの件
09:30~10:15  2日前に入院先の○○病院から退院できると連絡を受け、
ご本人と入居先の有料老人ホー ムに向かう前に○○病院に行く。
入院費等支払については、昨日連絡を入れ、およその金額等を確認し、
銀行から引き出し準備しておいたが、請求書が間に合わないものもあるとのこと。
郵送を依頼し、後日振り込むことに了承を得る。
病室へ行くと、ご本人は緊張はあるものの自宅ではなく施設に行くことにほっとされているようだ。
ヘルパーに発見されるまでの一晩、一人で高熱で苦しかった記憶がどこかにあるようだ。
荷物を整理し、予約しておいた介護タクシーで有料老人 ホーム○○○に向かう。

10:45~12:30  有料老人ホーム○○○に到着。
Fさんは、既に身の回りの荷物を搬入している居室のベットに休んでもらうこととし、
施設長と契約書を交わすこことなる。
まず、「重要事項説明書」により運営会社の情報、提供されるサービス等の説明を受け、
「管理規程」で介護施設の運用規定と利用上の条件を確認。
最後に 「入居契約書」で入居条件等を確認する際、関与できる親族がいないため
身元引受人がいないと告げると後見人に依頼される。
後見人はご本人の財産を管理しており、利用料等は責任を持ってご本人の財産から支払うこと、
不足の事態が生じた場合の窓口になることで了承を得る。
その間、食堂に案内されて昼食を済まされたようだ。